秋田の方言メモ/#16から#20まで

#16ケートラ

ケートラとは軽トラックのことです。この発音が一般的じゃないでしょうか。携帯電話のことがケータイになったのもこの流れと同じでしょうね。この前数ヶ月ぶりに会社のロゴが入っていない、おそらく自家用と思われるケートラが走っているのを発見しまして懐かしく思えてしまい……。唐突ですがこの話を。

秋田県の農家には基本的に車が2台、もしくは3台あります。「セダンとケートラ」「ワゴンとケートラ」「セダンと軽自動車とケートラ」の組み合わせなどが多いですね。つまり「何かとケートラ」の組み合わせになっているんです。私の実家の場合は「パルサー(日産)」「ハイゼット(ダイハツ)」の2台です。ちょっと前までは「ハイゼットのバン(ダイハツ)」を加えた3台でした。あらやだ。なかなか渋い組み合わせ。私には真似ができないですね。父のセンスのよさには脱帽(笑)

この前ケートラの話を東京出身のIくんにしたところ「ケートラぁ?(笑)」と言われる始末。秋田県民は誰一人としてケートラを小ばかにしません。ケートラが大好きな人ばかりなので。ケートラって意外とすごいんですよ。冬にスキーキャリア無しでスキーに行けますし。でも他にはすごい例が思い浮かびません(涙)

秋田県では免許を取りたての人が最初に乗る車にもなっていますね。車両が小さいのみならず、バックする時に後輪の位置が手に取るように分かります。いわゆる「おもちゃっこ」です。ギアチェンジ、ハンドリング、加速、視界……、どれをとっても「おもちゃっこ」です。これでしばらく練習してから何か自分の好きな車でも買えばいいんです。

あと「ケートラとじいちゃん」=「the田舎」という感じもします。「じいちゃん、迎えに来る」と話している中高生がいたら、かなりの高確率でケートラが来ます。ちなみにうちのじいさんは免許ナシ。大正の香りを感じます。

ケートラはいい面も多いのですが、悪い面もあります。といいますか、農家の人は悪い面があるにもかかわらず仕事のために乗らなければいけないのが現状です。危険。これが最大のネックですね。見れば分かりますが、運転者をガードしてくれるのが鉄板1枚。新規格のケートラが発売されましたが、やはり安全面はまだまだですね。じいちゃんと中高生のコンビを事故から守るためにも、何とか更に改善をしてもらいたいです。また、うちのケートラは非常に尻を振りやすいです。「2WDで雪道」という条件下では、ケートラは構造上後ろがやっぱり軽いので確実に尻を振ります。あとどうしても街乗りには不向きですね。加速が悪くセカンドでねばれなかったり、パワステではないので右折の際にハンドルを腕力で持っていったり。

とはいっても、ケートラは大好きです。いい思い出ばかりですね。ケートラを運転する父の横顔が印象的です。家族に年に数回しか会わなくなると、やっぱりさびしいもんですよ。次はいつ会えるでしょうか。お盆に会えなければ、しばらく会うのはおあずけですね。こんなサイト作っちゃっていますけど、毎日が暇ではないので。なんだかすごーく暇そうに思われるでしょうけど。

04/06/24

#17しもう

昼はいつもの食堂で食べ、友人Yくんと話をしていました。色々と雑談を。今日正午あたりから昼すぎにかけて強い雨が降りました。その雨のことや、参議院選挙、年金、市町村合併などの話をしていました。日本の行く末を案じ、清き(?)一票を投じるようなそんな年になってしまいました。母から「成人式の案内が来たど」というメールも来ましたし。ちなみにYくんはソフトボールをやっていまして、こんな会話が。

「こんな雨じゃできないもんな。ボールに水しもうと使えないしね」

「しもうってなんだよ。また秋田弁かよ」

と。またって……。

今まで「しもう」は標準語だと思っていました。辞書で調べてみたところ、やはりありません。ですが「しもる」で調べたところ、気になる語がありました。「しもる」は水が入ってきて沈むという意味みたいです。うーん、かすっていますがちょっと違いますね。「しもう」は標準語では「しみる」の意味です。この単語はさすがにノーマークでした。いかにも標準語っぽい秋田弁のように私は思うのですが……。私は自分から出身を言わないと分からないほどクリアな標準語をしゃべりますが、こうしたところでちょっとしたボロがついでてしまいます。

他にも雨関連の話題を少しだけ。

あめ

雨のことです。何のことはありませんが、発音がちょっと違うんですね。標準語だと「あ」にアクセントがあるはずですが、秋田弁は「め」にアクセントがあります。それだと「雨」と「飴」の区別ができないと思う方もいらっしゃるでしょう。心配ご無用です。「飴」は「あめっこ」になりますので。大館には「あめっこ市」という祭りがありますし、湯沢には「いぬっこ祭り」がありますし、秋田県では「あねっこ餅」なるものも売っています。「〜っこ」という単語はたくさんありますね。ビッキーズというお笑い芸人がいます。「飴」という文字入りのはっぴを着て飴をばら撒くコンビです。彼らは「飴」を「あめちゃん」と言っています。関西の人は「飴」を「あめちゃん」と言うのかどうかよく分かりませんが、それと同じ感覚でしょう。

がばっと、じだっと

雨でがばっとぬれらがしてきた」「雨でじだっとぬれらがしてきた」などと使います。びしょびしょにぬれた時に使われる言葉です。標準語でも「がばがば」「じっとり」なら使うのではないでしょうか。私にはかなり濡れた感じが伝わってきますが、皆さんはどうでしょうか。似た雰囲気の単語で「がっぱり」もありますが、これは全く違う意味です。「ゆぎみぢでおらえの車がっぱりはまった」などと使います。(標準語訳は「雪道でうちの車がずっぽりはまった」)「がっぱり」は冬によく使われることとなる単語ですね。秋田県民は冬によくはまります。

余談ですが、案内が来たという成人式について。秋田県では成人式をなぜか19〜20歳の時と、20〜21歳の時に行う市町村の2パターンに分かれます。私と同じくらいの年の人にはこの違いのため何かと問題が生じます。私の出身のところでは市町村合併が予定されていて合併前後で成人式を行う年齢が変わってしまうんです。さて私はどうすれば……。でも実家に案内が来たとのことなので今年行うことになるのでしょう。もしかしたら成人式を2回できるという貴重な機会を得られるかもしれませんね。ですが、合併した理由を考えるとそんなことは微塵も期待できないでしょう。はてさてどうなることやら。

追記です。最近暑いのでよく汗をかきます。そのときに汗が「しもって」きました。汗でひりひりしてきたことをこう言います。こんな「しもう」の使い方を思い出したので忘れないうちに書き足しておきます。やはり「しもう」は「しみる」とほぼ同義と考えて間違いはなさそうです。

04/07/31

#18コンビニ

いつものように、いつもの食堂で昼食。その時にふとコンビニの話に。コンビニに行くことはよくある上、私たちには関心のある話題ですね。話題になることも多いです。その時に以前から気になっていたことをぽろっと口にしてみました。

「ここってコンビニに入った時に『いらっしゃいませ』って言われるよね」

「秋田だと『いらっしゃいませこんにちは』って言われるんだけど」

と聞いたら、青森(津軽地方)出身の友人が同意してくれました。秋田と青森にはつながりを感じます。この時雑談をしていた4人の出身は秋田、青森(津軽)、岩手、三重となっています。秋田は当然ですが私。このことに同意したのは1人だけでした。他の2人はそんなことは知らないと。「いらっしゃいませこんにちは」ですが、「いらっしゃいませ」「こんにちは」と2つの語に分けることなく、一気に言い切ります。最近秋田に住んでいないので現在の事情はよく分かりませんが、5年くらい前からそうでした。何となく心に残っているということは当時から気になっていたということでしょう。どのコンビニなのかまでは覚えていません。

話は変わります。コンビニについてですが、以前Iくんが興味深いことを言っていました。

「コンビニでさ、おにぎり買うじゃん」

「うん、で?」

「そのとき『温めますか?』って言われない?」

「うん」

「ありえなくない?」

私の知っている限りコンビニの店員は普通「温めますか?」と聞いてきます。店員が言うのを忘れたり、達観したおばちゃんだったりしない限り。Iくんは、弁当は温めるみたいですけど、「おにぎりを温めるのはありえないこと」と言っていました。これは非常に興味深いですね。コンビニはやれマニュアルだ、やれファミコン言葉だ、とやゆされがちです。Iくんのおかげでマニュアルも地域の実情に合うように色々と気を使っていることが判明しました。

店員だって好きで「いらっしゃいませこんにちは」と言っているのではないはず。その言葉の意図が分からないまま「そう言え」と言われているから言っているのでしょう。「日本語の乱れだ」などと店員に主張する人は論外。おにぎりを「温めますか?」と言う判断基準も店員にあると思いますし。暑かったら言わないでしょうし、寒かったら言うでしょう。「マニュアル」うんぬんと店員に言う人もこれまた論外。

コンビニだって大変なのですよ。コンビニでバイトしている友人が多いので苦労話を聞かされます。私はここで何故に彼らを弁護してやってるんでしょうね(笑)彼らから聞いた話ですが万引きで帳尻が合わないことも多いし、酒に酔った人に絡まれ殴られることさえもあるとか。本当にお疲れ様です。

最後に秋田のコンビニ事情について。秋田県南では「ローソン」「サンクス」「サークルK」「デイリーヤマザキ」が勢力を拡大しています。「ファミリーマート」「セブンイレブン」「ミニストップ」は全く記憶にはありません。「セブンイレブン」はCMをしていたのですが、どこにあるのか分かりません。「セブンイレブン」のサイトで秋田県の店舗検索をしたところ……、秋田県の項目がありません。あと、数kmおきにぽつぽつと散在しているのが普通です。コンビニに歩いていくなど秋田では邪道。車で行きましょう。

一人暮らしを始めた時に「ファミマ行かない?」と言われ、「え?」と沈黙してしまったことがあります。その人の歴史の中にはファミリーマートがしっかりとあり、私には全く無かったのですね。このあたりにも言葉の面白さ、難しさがありますね。

04/06/29

#19リフォーム

「リフォーム完成した!センサーつきトイレ〜〜!^^」

という年甲斐も無いメールが40代半ばの母から。何のセンサーなのかは全くの謎です。どうやら実家をリフォームしたみたいです。

リフォームした理由が本当に笑えます。宮城県で大きな地震があった際、なぜか実家の風呂の壁のタイルに亀裂がはしりました。仙台の私のボロアパートも何にもなかったのに……。あともう一つ大きな理由があります。トイレがブレーンバスター垂直落下式のものだからです。意味はどうぞご自由に想像なさってください。

私が知っている限り、実家はこれまで二度リフォームしたことがあります。平成3年の台風19号で、縁側のガラスがはずれて壊れた事があります。その時に家の周囲のガラスというか雨戸というかそれら一式を頑丈な物に変えました。もう一度は、ぼろぼろになった居間の天井とふすまを。二度目のリフォームは人目を気にした見掛け倒しのものであることは、当時小学生だった私にも十分理解できました。父と同じくらいの年の実家ですが、果たしてリフォームではなく本丸に手を出すのはいつの日でしょう。もしかしたら今回のリフォームであと10年ねばれば、私が建て替えをしてくれるとでも思っているのでしょうか……。言わずもがな、その意図が見え隠れ。

リフォームなんてめったにすることではないので、リフォーム関連の秋田弁を紹介します。

ぼっこれる

私の家の風呂の壁が「ぼっこれだ」ので今回リフォームしたわけです。「ぼっこれる」は「壊れる」という意味です。「ぶっこわれる」に近い響きなので納得しやすいかと思います。ちなみに「壊す」ことは「ぼっこす」と言います。「ぼっこす」は使い方が難しいかもしれません。ちょっとだけ壊れた場合にしか使えないからです。風呂の壁のタイルに亀裂が入るとか、何かパーツがぽろっと取れてしまう(ゴミ箱のふたがはずれてはまらない等)とか、電気系統のトラブルで車が動かないとかです。確かに壊れているのですが、こわれても外見がとどめられている場合に限り使えます。風呂が崩れ落ちてしまったり、パーツが取れるのではなく粉々になってしまったり(皿を落として割ってしまう等)、車が事故ってつぶれてしまったために動かなかったり……。こんな場合は普通「ぼっこす」とは使いません。

ほごす

リフォームするために実家の風呂とトイレは「ほごす」ことになったのです。標準語にも「ほぐす」という言葉があります。

ほぐ・す 【▽解す】 (動サ五[四])
  • もつれて固まった状態を、といてもとへもどす。結ばれたり織られたりしているものをさばいて分ける。
    「魚の身を―・す」「織り糸を―・す」
  • 緊張・疲労・怒りなどを、おだやかな状態へもどす。
    「気分を―・す」「旅のつかれを―・す」「肩のこりを―・す」

ですが「家をほぐす」と標準語で言わないでしょう。私は聞いたことがありません。でも古い家や壊れた家を解体して更地にするのは、ほぐすの1番目で何となく納得できます。「まっさらな状態にすること」や「バラバラにする」ことが秋田弁の「ほごす」に近い感覚のように思われます。「じでんしゃどごほごす」は「自転車を解体する」という意味になりますし。似ているようでも、秋田弁の「ほごす」は標準語の「ほぐす」とは全く違う語のような気もしますね。よく分かりません。難しいです。助け舟を出してくださる方やご意見、ご指摘をしてくださる方がいるとうれしいです。

でゃぐ

「大工」のことです。標準語と発音がちょっと違うだけです。ちなみに実家にはどこぞの匠は来ていません。

04/06/30

#20秋田の食べ物

お盆に帰省しました。そのとき食べたものの紹介などをさらっと。

ぼだっこ

でぎだど!ままけ〜!」(標準語訳は「できたぞ!ごはん食べろ〜!」)とばあさん。

行ってみると「ぼだっこ」が昼食のおかずでした。「ぼだっこ」とは「塩鮭の切り身」ですが、なんだか少し塩分濃度が違うような気がします。「ぼだっこ」の方がしょっぱいと思います。でも「塩鮭」の塩分が「ぼだっこ」と同じになっても「ぼだっこ」とは言わないでしょう。「ぼだっこ」は「ぼだっこ」なのです。

でごづげ

でごづげどなすづけもけばいべ?」(標準語訳は「たくあんとなす漬も食べればいいんじゃないの?」)とばあさん。

でご」とは「大根」のことです。単に発音が訛っているだけです。秋田には「いぶりがっご」なる食べ物もありまして、たくあんには似ていますが風味が違います。「でごづげ」は「たくあん」、「いぶりがっこ」は大根の燻製の漬物(表現はおかしいですけど…)のことです。「いぶりがっこ」は今では全国的に有名になりました。いぶすことで独特の風味が生まれています。どんな味に似ているかはちょっと表現できません。「がっこ」(「いぶりがっこ」は通称「がっこ」)は他のどんな食べ物とも一線を画しています。あと、秋田弁の漬物の発音には特徴がありまして「つけおの」「つきょうの」のように聞こえます。

たばご、ときみ

たばごにときみもけ!」(標準語訳は「おやつにとうもろこしも食べろ!」)とばあさん。

たばご」とは「タバコ休み」のことでそのものズバリの意味なのですが、秋田では転じて「おやつの時間」などの意味でも使っているみたいです。「たばごだ」(標準語では「おやつの時間だ」)とは使います。「たばご」には「おやつ」そのものの意味はなく、「たばごけ!」と言ったら笑われます。「おやつを食べて!」ではなく「タバコ食べて!」という意味になってしまいますので。

ときみ」とは「とうもろこし」のことです。私の家では「ときみけ!」というと、必ず茹でたとうもろこしが出現します。ざるにわんさか。茹でる以外の選択肢は無いに等しいです。

記憶によると「とうもろこし」を北海道では「とうきび」と言ったはずです。北海道で「とうきびチョコ」なるものを買ってきて、食べたことがあります。「ときみ」と「とうきび」はそっくりですね。北海道と秋田にも方言に関しては関連性がありますね。

えご

私の実家ではお盆のときや朝食のときによく食べます。海草がぶつぶつと入った寒天みたいな緑色の食べ物で、しょうゆをつけて食べます。お盆や朝食によく登場するのはどことなく精進料理っぽい雰囲気が漂っているからでしょう。小さいころにはなんとも思いませんでしたが、大人好みの渋い味。最近これがローカルな食べ物だと気づきました。「えご」と線香は本当にナイスコンビです。

みんじゃ、すいが

みんじゃですいがはやせで!秋田でねばこういうごどでぎねぇよ!」(標準語訳は「台所ですいかを切って!秋田じゃないとこういうことできないよ!」)とばあさん。

みんじゃ」とは「台所」の意味です。由来はよく分かりません(汗)台所を水周りと言うことですし、「みず」に関係しているから「みんじゃ」なのかなと推測することしかできません。

「毎日すいかをたらふく食べられます!」

「家は10部屋以上あります!」

「車が3台あります!」

などと言っている人を見かけたら、「こいつお金持ちなんだ、感じ悪いな」と気を悪くなさらないで下さい。間違いなく秋田などの田舎出身です。それに、すいかの手伝いのバイトをしている高校生を見るのも、「すいが食ってしょんべではるで」(標準語訳は「すいか食べておしっこがでるよ」)などと言っている人を見るのもまた一興です。

そういえば「ではる」で思い出しましたが、小学生のときに極度の緊張からか「今度大会にではることになりました」なんてステージ上で言ってしまって笑われている奴もいましたね。「ではる」なんて秋田らしからぬ、京都っぽい響き。

ままざめさねね、ばんげのしゃっこなんとすべ?」(標準語訳は「ご飯の準備しないと、晩のおかずどうしよう?」)なんて言う母の買い物につきあい、「ままけ〜!」と叫ぶ、そんなばあさんの声を聞きながらテーブルにつくと「ぼだっこ」だったり。

これだ……。この感じだ……。そちらはいつもと変わらぬ日常の1コマなのかもしれませんが、私にとっては帰ってくる場所がここなんだなと実感する1コマです。

まあ、ばあさんの老婆心も困ったものです。これぞ本当の老婆心といったところですね。

04/08/23

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